一般社団法人 外食アレルギー対応協会は、2026年10月6日(火)、秋の合同研修会「修学旅行のアレルギー対応方法」を開催しました。ホテル・飲食店・旅行会社・自治体などから、会場とオンラインをあわせて約60名の方にご参加いただきました。

2026年10月6日 外食アレルギー対応協会 秋の合同研修会

当協会の合同研修会は毎年2回開催しており、春は新人向け、秋は現場でアレルギー対応をリードする方向けの位置づけで実施しています。今回は「事例を共有し、明日から実行に移すこと」をゴールに、旅行会社、宿泊施設それぞれの立場からの事例や、組織としてアレルギー対応をどう徹底するか考え方の基本をお話しいただきました。

当日のプログラム
当日のプログラム

協賛企業プレゼンテーション:理研ビタミン株式会社

開会後、協賛企業の理研ビタミン株式会社 小野寺様より、特定原材料等28品目を原材料に使用していないドレッシング「笑顔でランチ」シリーズをご紹介いただきました(ごまドレッシングのみごまを使用)。学校給食で「みんなで同じものを食べられる」ドレッシングとして使われてきた商品で、今後は外食向けにも展開されます。

修学旅行の受け入れ施設向けには、ドレッシングをソースとしてアレンジし、地元の食材と合わせることで、アレルギーのある生徒さんにも「その土地ならでは」の一皿を届ける提案がありました。会場では試食会も行われ、参加者からは「28品目不使用とは思えないおいしさ」との声が上がりました。

理研ビタミン 笑顔でランチ ドレッシングを使ったご当地ソースの提案
同じソースでも、土地ごとの食材と合わせてアレンジできる
現場では試食会があり、少し火を入れるだけで酸味がまろやかになって食べやすくなるなど、調理上のコツをご教示いただきました。

第1部 基調講演「アレルギー対応 意識徹底のさせ方」

株式会社セブン-イレブン・ジャパン QC・物流・生産管理本部 QC部 総括マネジャー 斉藤 俊二 様

第1部 講演テーマ「アレルギー対応 意識徹底のさせ方」

1日約2,000万人が来店するセブン-イレブンでは、食物アレルギーのある方も日常的に商品を利用しています。斉藤様は、事故が起きた場合の「お客様の健康被害」「企業の経済的損失」「信用の失墜」という3つのリスクを挙げ、約10年にわたって取引先メーカーとともに取り組んできた内容をご紹介いただきました。

「豊かな土壌が安全な商品を生み出す」

講演の冒頭で示されたのは、1本の木のイラストです。果実が「安全な商品」、幹が「マネジメントシステム(HACCP・FSMSなど)」、根が「組織能力」、そして土壌が「食品安全文化」。品質管理の議論は果実や幹に向かいがちですが、本当に大切なのは根と土壌、つまり組織とカルチャーだというお話でした。

法令どおりの表示だけでは事故は防げない

セブン-イレブンでは、法令で表示義務のない商品も含めて特定原材料等28品目の情報提供を進めてきました。それでも、お客様は表示よりも「見た目」や「商品名」で判断することが多く、想像できない食材が使われていたことによる誤食が起きてきたといいます。そこで、お客様の過去の食経験から商品の安全性を考えるようにし、次の3つを開発のルールにしているそうです。

  • 見た目から使用を想像できない食材は使わない
  • アレルゲンが増える規格変更をするときは、必ず外観を変える
  • 事実に基づいた、わかりやすい商品名をつける

また、製造現場ではラベルの照合機を開発して全ラインに導入するなど、「人はミスをする。だから設計(仕組み)が守る」という考え方で、人の確認に頼らない管理を広げています。

「自分は意識があるのに、みんなの意識が薄い」にどう向き合うか

講演の後半では、多くのリーダーが抱える「ルールはあるのに徹底されない」という悩みに対し、ジョン・P・コッターの組織変革の8ステップ(危機意識を高める、推進チームをつくる、ビジョンを示す、伝え続ける、障害を取り除く、短期的な成果を上げる、成果を生かして加速する、文化として定着させる)に沿ってヒントが示されました。

  • 危機意識は「リスクの言葉」と「数字」と「当事者の声」で伝える:件数だけでなく、事故が起きたら誰がどれだけ困るのかを具体的に伝える。
  • 伝達はイベントではなく反復:年1回の勉強会で終わらせず、朝礼や毎週のミーティングで繰り返し伝える。
  • 経営層・中間管理職・現場の3層で考える:鍵は中間管理職。現場が動かないときは経営層を巻き込み、方向性と資源を示してもらう。
  • 小さな成果を「祝う」:KPIを見える化し、良い取り組みを褒め、承認することが継続の力になる。

最後に斉藤様は、文化として定着させるとは「重大事故がなくなるまでやり続ける覚悟をリーダーが持つこと」だと締めくくられました。

第2部 パネルディスカッション「修学旅行のアレルギー対応 ― 旅行会社と宿泊施設の事例」

株式会社日本旅行 東京教育営業部 リーダー 柳 優紀 様
霧島国際ホテル 宿泊担当支配人 窪田 敦佳 様(オンライン登壇)
ファシリテーター:株式会社JR西日本ホテルズ 執行役員 チェーンサポート本部 リスク管理室長/当協会理事 木村 実根子

第2部では、修学旅行を「手配する側」と「受け入れる側」の双方から、アレルギー情報の集め方と伝え方について議論しました。

第2部 パネルディスカッションの様子
第2部の様子(窪田様はオンラインでご登壇)

情報を集める側の悩み:タイミングと「本人の声」

日本旅行では、学校を通じて保護者にQRコードを配り、アレルギーヒアリングシステムまたは紙でアレルギー情報を集めています。柳様からは、成長期の中高生は体質が変わりやすいため調査は出発の約3か月前に行うこと、対象者が多いと宿泊施設での代替食の準備に時間がかかることが悩みとして挙がりました。また、保護者だけで登録した結果、現地で生徒さん本人から「これは食べられない」と申し出があり、施設に急きょ別メニューを用意してもらった事例も紹介されました。

受け入れる側の悩み:「食べられないもの」より「普段食べているもの」を知りたい

窪田様は、実際に届くアレルギー情報をもとに、「エキスは大丈夫か」「だしは何なら使えるか」など、施設側が判断に迷うポイントを具体的に示されました。ホテル側で判断して提供することは避けたいため、「食べられないもの」だけでなく「普段食べているもの」や「ビュッフェで自分で選んでよいか、特別食がよいか」まで伝えてもらえると、準備がしやすくなるとのことです。

これを受けて柳様は、保護者に書いてもらう内容をどう伝えるかが重要だとし、事前説明会などで記入の意図まで説明していきたいと話されました。

ビュッフェ形式が増えている理由

柳様によると、コース別の修学旅行が増えていることもあり、ここ1年ほどでビュッフェ形式の宿泊施設を選ぶ学校が増えているそうです。料理の成分表を事前に保護者まで共有し、本人と保護者で「食べられる・食べられない」を確認しておくことで、学校側の確認の負担が減るためです。重度のアレルギーの生徒さんには専用のセットメニューを用意してくれる施設もあり、旅行会社として大きな安心につながったという事例も紹介されました。

意識をそろえるために

旅行会社と宿泊施設の間でアレルギーへの理解度に差がある、という課題に対し、柳様は「命に関わることなので、チーム単位ではなく全社で足並みをそろえて学ぶ機会が必要」と話されました。窪田様は、修学旅行の受け入れ経験が少ない施設ほど、担当者が繰り返し注意を促し、「アレルギーに慣れてはいけない」という姿勢を保つことが大切だと述べられました。第1部の「伝達は反復」というメッセージとも重なる議論となりました。

質疑応答から

  • ビュッフェのおかわり時のコンタミネーションが心配:専用トングの用意、料理と料理の間隔を空けた配置、食事前のアナウンスなどの工夫が紹介されました。
  • 「食べたことがないので分からない」という回答が多い:除外ではなく「食べられるもの」を確認し、シンプルな塩焼きやステーキなど提供できるものを準備する。そのためにも、ぎりぎりの発注をせず時間に余裕を持つことが大切です。

アレルギー対応 確認テスト

最後に、参加者の皆さまにスマートフォンで5問の確認テストに挑戦していただきました。特定原材料の範囲、卵黄・卵白の表示ルール、代替表記、業務用食品の情報伝達、アナフィラキシーの定義を問う、リーダー向けのやや難しい内容です。平均点は50.4点(100点満点)で、特に「代替表記」の問題は正解率が低い結果となりました。

アレルギー対応 確認テストの結果
確認テストの結果(回答50件)

次回の合同研修会のお知らせ

次回は2027年4月20日(火)13:00〜15:00に、新人向けの合同研修会「はじめて現場に立つときに知っておくべき 食物アレルギー対応の基礎知識」を開催します。昭和医科大学 医学部 准教授の鈴木慎太郎先生に、医学的な視点からアレルギーの基礎をお話しいただきます。新入社員の皆さまとあわせて、ぜひご参加ください。

次回の合同研修会(2027年4月20日)

▶ 詳細・お申し込みはこちらの記事をご覧ください。

ご登壇いただいた皆さま、ご参加いただいた皆さま、誠にありがとうございました。